日本企業のITリテラシー危機。競争力を取り戻すための具体的解決策

web屋・システム屋として働いていると、日本人のITリテラシーの低さに嫌気がさす。今は「昭和か? 平成初期か」?と疑うことがしばしばある。僕の記憶では2000年代から、多くの企業はパソコンを導入したはずなので、最低でも10年以上、パソコンを使って仕事をしているにも関わらず、何も知らない。そんな人間を相手にシステムの話をしても、通じる訳がない。もちろん、システムに精通している担当者がいる会社もある。あることにはあるが、体感では10%以下である。少子高齢化が深刻な問題になり、少人化や効率化が求められる現代、システム導入の前に、全体的なITリテラシーの向上を行う必要があるのだ。

システム導入時の要件定義でも、現状の業務プロセスを単純にシステム化することしか考えていないことが多い。デジタル化による業務改革の可能性を理解していないため、せっかくのシステム導入が単なる紙の電子化で終わってしまう。これでは本来得られるはずの効果が半減してしまう。まだ、システム化をする業務プロセスを理解しているなら良い方で、業務プロセスも、こちらに丸投げしてくる場合が、ほとんどである。これには、ほとほと困る。システム屋は、業務内容など知らないのである。

確かに、基本的なPC操作すらままならない様子なので、システム導入をする時に「何を(データ)」「どうする(ロジック)」を考えることは不可能なのかも知れない。ただ、その要件定義が出来なければ、プログラミングを行うことは出来ない。つまり、欲しいものが分からない状態で、欲しがっているのである。

このような状況の背景には、日本特有の組織文化も影響していると考えられる。年功序列の人事制度により、デジタルネイティブな若手社員の意見が軽視される一方、ITに不慣れな管理職の判断で重要な意思決定が行われている。また、「前例踏襲」の考え方が強く、新しい技術やツールの導入に消極的な傾向がある。

教育面でも課題が山積しているのではないか。例えば、そのような企業では、社内研修は形式的なものが多く、実践的なスキルが身についていない。また、業務時間中にスキルアップの時間を確保することも難しい。外部研修に参加する機会も限られており、個人の努力に依存している状況なのだと思う。

DXが叫ばれる中、このままでは日本企業の競争力は確実に低下していくだろう。すでに、海外企業との生産性の差は開く一方だ。政府も「デジタル庁」を設置するなど対策を進めているが、現場レベルでの改善はまだまだ不十分と言わざるを得ない。

では、どのように改善していけばよいのか。まず必要なのは、経営層のITリテラシー向上だ。デジタル化の重要性を理解し、積極的な投資判断ができる経営者を増やす必要がある。次に、実践的な教育プログラムの整備だ。座学だけでなく、実際の業務に即した形での研修を実施し、確実にスキルを定着させることが重要である。

また、若手社員の知見を積極的に活用する仕組みも必要だ。若手社員が上司にITスキルを教える取り組みを導入している企業もあると聞く。このような世代間の知識共有を促進することで、組織全体のITリテラシー向上が期待できる。

さらに、情報セキュリティ教育の強化も急務である。単なるルール説明ではなく、実際のインシデント事例を基にした実践的な教育を行い、社員一人一人のセキュリティ意識を高める必要がある。長期的には、学校教育の段階からプログラミングやデジタルリテラシーの教育を充実させることも重要だ。すでに小学校でプログラミング教育が必修化されているが、現在働く人間のITリテラシーを上げることが求められる。

とはいっても、パソコンやシステムをだと認識している人間には通じないのである。

日本企業のITリテラシー向上は、一朝一夕には解決できない課題である。しかし、放置すれば日本経済全体の競争力低下につながる重大な問題でもある。経営層の意識改革、実践的な教育体制の整備、世代間の知識共有の促進など、複合的なアプローチで地道に改善を進めていく必要があるだろう。

(了)

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