わりーね。ちっと茨城弁でいいけ?
うちげ、茨城の「けんぽく(県北)なんね。ほどんと福島。なーんもねーの。
デートちゃ日立に行くのが定番。でも、日立っちゃ近いから、ぜってー誰かにめっかんだっけ。

めっかる=見つかる
んでね、オンナと歩いてんの、めっかりたくねーから、東京に行ぐのね。
みど(水戸)でもいいっちゃ、いいんだけど、スーパーひたちに乗っかれば、2時間で東京だっぺよ。

乗っかる=乗る
んで、初めてオンナと東京に行った話。
なんつーの、こっぱずかしい思い出。
初めての東京
俺、東京行ったことあんのね。家族で動物園とか。
んでも、ほどんと初めて。かっこつけっぺよ。男だし。

ほどんと=ほとんど
初めてなんてオンナに、ばれっとこっぱずかしいべよ。
んで、東京ウォーカーなんて読んだくれーにして東京に行ぐの。
したっけ、みどぐれーにしとけって話なんだけど、誰かにめっかると面倒だっぺよ。
オンナと歩いてっど、やっかむ奴がいんのね。

したっけ=そうしたら

みど=水戸

やっかむ=嫉妬する
んで、初めて行く東京は幼馴染の純子(仮名)ちゃんと一緒。
俺、がっこのとき、ちんちゃいこで、何すんのもひとりで出来なくて純子ちゃんに面倒みてもらってたんだっけ。

がっこ=学校
んで、ちょっこんだ奴らとつるむようになって疎遠になってたんだけど、一緒にけーったりしてた。
元々、うちげと純子ちゃんげは、近所で親同士も仲良くて、よんだり、よばれたりして家族ぐるみでの付き合い。

〜げ=〜の家

けーる=帰る

ちょっこむ=調子に乗る

よぶ=ご馳走になる
高校は別々なんだけど、けーりの電車が一緒になったりして駅から一緒にけーんのね。
付き合っちゃねえんだけど、仲が良かったのね。
下品な友達
んで、純子ちゃんと「出かけっか」って話になったとき、高校の友達に相談したんだっけ。
したっけ、日立っちゃねーよ。東京に行ってこーって話になった。
僕「みど、行って、けーてくればいぐね?」
友「みど行って、エクセルで買いもんけ?」
僕「んだ」
友「女子と二人なんだっぺよ? したっけ、東京だっぺよ?」
僕「東京行ったって、やることあんめ」

あんめ=ないじゃん
友「東京行きゃー何だって、できっぺよ」
僕「付き合ってねーしさ」
友「いしけーな」

いしけー=ダサい
僕「いしこくねーし。つーか、金もねーし」
友「オンナと行ぐならしゃーめーよ」
僕「んじゃ行ってくるわ」
友「その辺でおっぱじめんなよ」

おっ始める=始める(この場合エッチ)
僕「やんねーし。おめげのねーちゃんから東京の話聞いてくんね?」

おめげ=お前んち
友「んだね、聞いどく」
結局そいつ、ねーちゃんに話聞いてくんなくて、東京ウォーカー読んだ。
アメ横
んで、当日二人ともスーパーひたちに乗りはぐんないで乗っかった。

〜はぐる=〜し損なう
僕「どこ行ぐ?」
純子「東京っちゃ『アメ横』だっぺよ」
僕「したっけ、ほどんと知らねーから着いてぐよ」
なんだかんだ、昔と同じでごちゃっぺな僕より純子ちゃんが主導権を握る。

ごちゃっぺ=だらしない
んで、うすらさみー上野駅で降りてアメ横に向かう。
したっけ、急に純子ちゃんが腕を組んでくんのね。

うすらさみー=ちょっと寒い
僕「なじょした?」
純子「うん?」

なじょした=どうした
(なじょしっぺ。これが東京の魔力か?)

なじょしっぺ=どうしようかな
いやいや、なんちゃねえんだよ。別に腕組むくらいなんちゃねえ。
なんちゃねえんだけど、小っ恥ずかしーべよ。

なんちゃねえ=どうってことない
僕「んだけんど、俺、おんこ(うんこ)」
純子「ちりし、あんのけ?」

ちりし=ティッシュ
おんこしたくねーけど、照れっぺよ?
俺、高2だし、童貞だし・・・。
純子ちゃんのやっこい胸が当たってるって。
ごめんね。雰囲気ぶち壊して。

やっこい=柔らかい
で、その後はなんちゃねー。幼馴染だし、一緒にお風呂に入った仲だし(小学生低学年の頃ね)しこたま、くっちゃべった。さっきは、たまげただけ、落ち着きゃだいじ。

くっちゃべる=お喋りする

だいじ=大丈夫
ファーストキッス
んで、東京の魔力で純子ちゃんもくっついてくるし、チャンスだっぺよ。
キッス。ずっとくっちゃべってる間も、純子ちゃんのこと意識すんのね。
でも、俺、ちんちゃこいのね。そっくりげーるぐれー背伸びしないとキッスができねえの。

そっくりげーる=ひっくり返る
加えて、成長が遅いから中学生、下手したら小学生なのね。
純子ちゃんといると姉と弟みてーに見えんの。
立場も純子ちゃんが上。
キッスしはぐりました。
2年後、東京に向かう
そんな思い出の東京に浪人の末、進学が決まった。
俺の引っ越し当日、地元の短大生になった陽子ちゃんは見送りに来てくれた。
僕「わりーね、朝早くに」
純子「気張ってこいよっ!!」
あの頃とは違って、成長した俺を見上げながら、純子ちゃんは、はにかんだ笑顔を見せてくれた。
「したっけ、行ぐわっ」
「したっけね」
東京に向けて、原チャリのスロットルを回す。
淡い青春。
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